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How did you feel at your first kiss?
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 最初にキスをされた時は本当にびっくりしたけれど、その先があるのだと知った時は、その比ではなく驚いた。
 跡部からのキスは、少しずつ時間が長くなって、少しずつ重なり方が深くなって。
 唇の表面の感触だけだったのは最初の数回。
 徐々に口腔や舌などの粘膜の感触を繰り返し与えられ、それだけでも神尾はかなり目を回していたのだ。
 なので、今日に至って、跡部の指先が神尾の耳元からするりと髪の内部にもぐってきて、跡部の唇で首筋を撫で下ろされ、神尾は飛び上った。
 キスは終着地点ではなかったのだ。
「………………」
 ぎくりと竦み上がった神尾の喉元で、跡部が低く笑った。
「さすがに流されねえか」
「…なが…、……え?…」
 神尾が言葉を詰まらせていると、ちらりと上目を寄越して、跡部は唇の端を引き上げてきた。
 どの角度から見ても、うんざりするほど秀麗な顔立ちだ。
 そのせいか、はたまた違う理由のせいなのか、神尾はのぼせたように顔を赤くして押し黙る。
 普段だったら、そういう、人を観察するようなツラすんなと、怒鳴る事など神尾にとって簡単な事なのに。
 出来ずに言葉に詰まる。
 そんな神尾の様子をつぶさに見やって、跡部は、また小さく笑った。
「ま、この先の意味は判ってるみてえじゃねえの」
「………っ……」
 頭を片手で抱え込まれるように、跡部の指先に力がかけられるのが判った。
 下から首を反らして伸びあがる跡部に、唇を塞がれる。
 キスで塞がれ出口を無くして、ますます荒く鳴り出したのは神尾の体内の鼓動だ。
 それでもキスはいつも通り。
 いや、正しくは、やっぱり少しずつ、長くなっているし、深くなっているのだけれど。
 跡部の空いている方の手が、神尾のシャツの裾から内部に忍んでくる。
「……、……ッ…」
 咄嗟に神尾は両腕を突っ張らせた。
 跡部を押し返すような所作に自覚はなくて、自らの手で跡部を引き剥がして初めて、神尾は茫然とした。
「あ………」
 拒絶、した訳ではないのだ。
 ものすごく矛盾しているかもしれないけれど。
 でも、だから、神尾は慌てた。
 跡部のキスから逃げるような真似をしたのも初めてだった。
 ひょっとすると物凄く怒っているんじゃないかと、恐る恐る神尾が伺い見た先で、跡部は、何故か機嫌が良い時の、少しばかり皮肉気な笑みをその唇に刻んでいる。
 うわあ、こいつ、人がびびってるの見て楽しんでやがる、と神尾は頬を引き攣らせた。
 それって物凄く悪趣味なことだろう。
 咄嗟に怒鳴りつけてやろうと神尾は思ったのに、何故か頬に軽いキスを受けて、どっと赤くなって、済し崩しだ。
「取り敢えず返事を寄越せ」
 何だか跡部から擦り寄ってくるようなキスがまた頬を掠って、神尾はくらくらと、跡部に問い返す。
「……返事って…なに」
「許可しろっつってんだよ」
 許可って何のだよう?と思わず泣き言めいた言葉を放った神尾は、そもそも返事などと言いながら、はなから選択肢がない跡部の物言いに、つくづく俺様な男なのだと思い知る。
「早くしろ」
「は…っ…早くとか言うな、馬鹿…!」
「早くじゃなけりゃいつだ」
 一分後か二分後かと矢継ぎ早に跡部が畳み掛けてくる。
 咄嗟に神尾は言い返していた。
「ご、………いや、…十分後……!」
「十分だな。判った」
「………………」
 自分で言っておいて何だが、十分って何だ、何なんだ…!と神尾は錯乱した。
 あっさり引いた跡部にも若干面食らう。
 正直な所、跡部が本気な事は神尾にも充分に判っていた。
 からかうような雰囲気を作っているが、どこか切羽詰った焦燥感のようなものを、確かに神尾は目の前の男から感じていたからだ。
 だから余計に身構えてしまったのだが、そんな跡部が日常の俺様ぶりを考えても実に珍しい事に、神尾の言う通りに十分を待つらしかった。
 くるりと身体を反転させられ、神尾は背後から跡部に抱き込まれる。
 背中にぴったりと跡部が密着していて、頭上に唇を埋められているのも感触で判った。
「な…、に、……この格好…」
「顔見たまま待ってられる訳ねえだろ」
 低く呟くような声に、神尾はこれ以上はないと思っていたのに、また頭の中が茹だる。
 煮えてくる。
 そういう真剣な声で言う事かと言ってやりたいが、頭も働かないし唇も動かないのだ。
 神尾は自分でも知らず知らずに混乱と動揺を深めていて、跡部はそれを熟知しているようだった。
 それから何も言わずにいる跡部の腕の中で、神尾は、呻くような声を洩らしながら、考える、ことになった。


 一分が経ち、二分が経ち、三分が経ち。
 四分、五分、六分。
 七分が経ち、八分が経ち、九分が経ち。


 十分が経った。

 十五分が経った。

 二十分が経った。


「面白ぇなあ、ほんと、お前」
 跡部は珍しく屈託なく笑みを零し、オラ、返事、と神尾を抱き込み揺すってくる。
 神尾は自分の胸元を通って肩を掴んできている跡部の肘下あたりを抱えて、大混乱を極めてショート寸前だ。
「や、…マジで、しぬ……」
「バァカ。死ぬ訳ねえだろ、この先控えて」
 ここから出してと目を回して神尾が言っても、しがみついてきてんのお前だろうと跡部はますます笑うばかりだ。
 そう、跡部は、笑っている。
 どれだけ神尾が待たせても、怒りもしない。
 何でだろうと神尾は跡部の腕の中で考えた。
 背後にいる跡部の表情は見えないけれど、明らかに機嫌がいい。
 普段だったら業を煮やして怒鳴ってきてる筈なのに。
 だらだらと、ただ時間が過ぎていくような、はっきりしないやり取りなど決して好まない男なのに。


 三十分が経った。

 それから。


 跡部の溜息にうなじがくすぐられて神尾は肩を竦める。
 仕方ねえな、と跡部の声がして、さすがにキレたのだろうかと神尾は思ったのだが、そうではなかった。
「俺が、お前の許可を貰ってやろうと思ったが、お前が言えないなら仕方ない」
「……跡部…?」
 跡部の腕の中で身体が返される。
 数十分ぶりに、正面から顔をつきあわせる。
 両頬を跡部の手のひらに包まれ、支えられ、唇に甘ったるいキスを貰って、それが多分神尾の最後の困惑を吸い取っていった。
「お前には拒否権やるから」
「………………」
 僅かに離れた唇と唇の合間で囁かれる。
「嫌なら全力出して逃げな。逃げきれないなら腹くくれ」
 もう、跡部は、笑っていなかった。
 ズキズキと、鼓動が熱くて、早くて、息苦しくなる。
 神尾をそうしておかしくする表情で、跡部は神尾の衣服に手をかけた。


 えらそうな王様の、それは最大級の譲歩だろう。
 だから貰った拒否権を、神尾はどこかそこらに、必死になって、投げ捨てた。
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