How did you feel at your first kiss?
横柄だ横暴だ自分勝手だ我儘だ何様だと散々に人の事を言ってくれるが、それはお互い様ではないだろうかと跡部は苦い顔で神尾を見て思う。
日曜日。
跡部は朝から自室にいて、神尾は午前中部活に行っていて。
跡部が終わり次第来いと神尾を家に呼び、不動峰のジャージ姿で神尾は跡部の部屋に入ってきた。
やってくるなり手首をとって引き寄せると、抗うでもなく神尾は跡部の胸元に収まる。
しかし、跡部が口づけを落とす手前で。
じっと。
「………………」
跡部を直視してきた神尾に、目ぐらいつぶれと跡部が眉根を寄せた隙のことだ。
今まさに唇と唇が触れ合おうとしているキスの雰囲気など、呆気なく払拭する言い様で神尾は言ったのだ。
「跡部。どっかいこうか」
「…あ?」
この状況で言い出す言葉だとは到底思えない。
跡部が凄むような声を出しても神尾はけろりとしていて、キスの寸前のこの体勢で、勝手に首を傾げている。
「どこがいいかな。そうだなー……、ん。そうだ。海にしよ。海。泳ぐのにはまだ早いけど、ぼーっとしに行こう。弁当持ってこ」
「神尾」
「弁当…うーん…俺つくったことないけど、うん、たぶんどうにかなるぜ」
「おい」
「買うんじゃ雰囲気出ないからなあ。がんばるぜ、俺。あ、台所貸してくれな。跡部」
「てめえ」
人の話を全く聞かないこの身勝手さは何だ。
跡部は唖然となりつつ、元来鋭い目つきを尚更にきつくして神尾を睨みつける。
どうしてこの状況でそういう話になるのか。
跡部には全く持って理解不能だ。
キスはどこにいったのだ。
一瞬キスされるのが嫌なのかと思ってもみたが、半ば跡部に覆い被されているようなこの状態で、取りあえず神尾はにこにこと笑っている。
怒鳴るのは簡単だが、そうするには拍子抜けする程、神尾の笑顔に邪気はない。
むしろ神尾は、やけに甘い目で、跡部をじっと見つめてきている。
跡部の胸元に両方の手のひらを当てて、そのしぐさは拒むというより甘えているように見えなくもない。
「海行こ?」
「…ああ?」
「約束をしておくと、駄目じゃん? 予定にしちゃったり、目的があったりすると、跡部またいろいろ考えるじゃん」
「お前が言ってる事の意味がさっぱりわかんねえよ」
呆れながらも困惑するなんて真似、跡部は神尾相手以外にした事がない。
皆目見当のつかないことを言い出す神尾に、不思議と腹はたたないが、どうしてせっかくこうして会ったばかりで外に出かけて行かないといけないのか、それが跡部にはまるで理解できなかった。
ついでに言えば、約束をする事や目的がある事、跡部が考えるという事が何故駄目なのかそちらも甚だ意味が不明だ。
神尾は跡部の胸元で小さく笑う。
「だからさー。気分転換?」
「あ?」
「気晴らしっていうか、ぼーっとしに行こうぜってこと」
な?と軽く首を傾ける神尾は跡部を真面目に見上げてくる。
「跡部、今、結構忙しいんだろ?」
「………………」
「そういうの、跡部はちゃんと片付けられるだろうけどさ。でも、俺はちょっと心配だし…」
最後、語尾が少し小さくなって。
神尾は僅かに俯いて。
照れくさくなってきたのか、神尾は何事かぼそぼそと俯いて言っている。
「………………」
それで跡部は、意識しない笑みを唇に刻む。
ここまでくれば、そういう事かと気づく。
神尾の思考。
まさか神尾が感じ取る程疲れた顔をしていたとは思っていないが、それでも見透かされたのは事実だ。
ゆっくり休めと言うのではなく、こういう誘い方をするのも神尾らしいと跡部は思う。
ここ最近、緻密なスケジュールで、考えて、動いて。
突発な気晴らしなどした覚えがない。
「おい」
跡部は神尾の顎に手をやって、上を向かせた。
「お前と会うのは、別にスケジュールだなんて思ってねえからな?」
「………ぅ…?…」
びっくりしたような顔をした後、神尾は、はにかむように笑った。
嬉しそうな顔をすると、途端に子供っぽくなる表情に、跡部は顔を近づけていく。
「………………」
ちいさく音をたてて唇を啄んで、跡部は至近距離で言った。
「…海じゃ出来ねえだろ?」
「………た…たぶん」
「多分かよ」
跡部は笑った。
機嫌よく、声にして、笑って。
横柄でも、横暴でも、自分勝手でも、我儘でも、何様でも。
構わないし、構わないだろう?と思う。
日曜日。
跡部は朝から自室にいて、神尾は午前中部活に行っていて。
跡部が終わり次第来いと神尾を家に呼び、不動峰のジャージ姿で神尾は跡部の部屋に入ってきた。
やってくるなり手首をとって引き寄せると、抗うでもなく神尾は跡部の胸元に収まる。
しかし、跡部が口づけを落とす手前で。
じっと。
「………………」
跡部を直視してきた神尾に、目ぐらいつぶれと跡部が眉根を寄せた隙のことだ。
今まさに唇と唇が触れ合おうとしているキスの雰囲気など、呆気なく払拭する言い様で神尾は言ったのだ。
「跡部。どっかいこうか」
「…あ?」
この状況で言い出す言葉だとは到底思えない。
跡部が凄むような声を出しても神尾はけろりとしていて、キスの寸前のこの体勢で、勝手に首を傾げている。
「どこがいいかな。そうだなー……、ん。そうだ。海にしよ。海。泳ぐのにはまだ早いけど、ぼーっとしに行こう。弁当持ってこ」
「神尾」
「弁当…うーん…俺つくったことないけど、うん、たぶんどうにかなるぜ」
「おい」
「買うんじゃ雰囲気出ないからなあ。がんばるぜ、俺。あ、台所貸してくれな。跡部」
「てめえ」
人の話を全く聞かないこの身勝手さは何だ。
跡部は唖然となりつつ、元来鋭い目つきを尚更にきつくして神尾を睨みつける。
どうしてこの状況でそういう話になるのか。
跡部には全く持って理解不能だ。
キスはどこにいったのだ。
一瞬キスされるのが嫌なのかと思ってもみたが、半ば跡部に覆い被されているようなこの状態で、取りあえず神尾はにこにこと笑っている。
怒鳴るのは簡単だが、そうするには拍子抜けする程、神尾の笑顔に邪気はない。
むしろ神尾は、やけに甘い目で、跡部をじっと見つめてきている。
跡部の胸元に両方の手のひらを当てて、そのしぐさは拒むというより甘えているように見えなくもない。
「海行こ?」
「…ああ?」
「約束をしておくと、駄目じゃん? 予定にしちゃったり、目的があったりすると、跡部またいろいろ考えるじゃん」
「お前が言ってる事の意味がさっぱりわかんねえよ」
呆れながらも困惑するなんて真似、跡部は神尾相手以外にした事がない。
皆目見当のつかないことを言い出す神尾に、不思議と腹はたたないが、どうしてせっかくこうして会ったばかりで外に出かけて行かないといけないのか、それが跡部にはまるで理解できなかった。
ついでに言えば、約束をする事や目的がある事、跡部が考えるという事が何故駄目なのかそちらも甚だ意味が不明だ。
神尾は跡部の胸元で小さく笑う。
「だからさー。気分転換?」
「あ?」
「気晴らしっていうか、ぼーっとしに行こうぜってこと」
な?と軽く首を傾ける神尾は跡部を真面目に見上げてくる。
「跡部、今、結構忙しいんだろ?」
「………………」
「そういうの、跡部はちゃんと片付けられるだろうけどさ。でも、俺はちょっと心配だし…」
最後、語尾が少し小さくなって。
神尾は僅かに俯いて。
照れくさくなってきたのか、神尾は何事かぼそぼそと俯いて言っている。
「………………」
それで跡部は、意識しない笑みを唇に刻む。
ここまでくれば、そういう事かと気づく。
神尾の思考。
まさか神尾が感じ取る程疲れた顔をしていたとは思っていないが、それでも見透かされたのは事実だ。
ゆっくり休めと言うのではなく、こういう誘い方をするのも神尾らしいと跡部は思う。
ここ最近、緻密なスケジュールで、考えて、動いて。
突発な気晴らしなどした覚えがない。
「おい」
跡部は神尾の顎に手をやって、上を向かせた。
「お前と会うのは、別にスケジュールだなんて思ってねえからな?」
「………ぅ…?…」
びっくりしたような顔をした後、神尾は、はにかむように笑った。
嬉しそうな顔をすると、途端に子供っぽくなる表情に、跡部は顔を近づけていく。
「………………」
ちいさく音をたてて唇を啄んで、跡部は至近距離で言った。
「…海じゃ出来ねえだろ?」
「………た…たぶん」
「多分かよ」
跡部は笑った。
機嫌よく、声にして、笑って。
横柄でも、横暴でも、自分勝手でも、我儘でも、何様でも。
構わないし、構わないだろう?と思う。
PR
この記事にコメントする
カテゴリー
アーカイブ
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析