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How did you feel at your first kiss?
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 誘ってみたものの、絶対断られると思っていた。
 だから跡部の合意を得た瞬間、神尾は呆気にとられたのだ。
「どういう理屈だ。自分で誘っておいて」
「だってよう…跡部が行くとは思わないじゃん」
「それなら何で誘う」
「………どうせ駄目でも言うだけは言っておきたいだろ」
「前向きなんだか後ろ向きなんだか判んねえな。お前」
 神尾を振り返るように流し見ながら、跡部は薄く笑った。
 整いすぎている面立ちは、初詣に向かう人の波の中に入り込んでも際立ってよく目立つ。
 跡部が着ているコートは高級そうではあったが色は地味めなアースカラーであるのに、そういう色味の服を着ている事で何故だか余計に派手に見える。
 初詣に行こうと跡部を誘った神尾は寒いのが好きでないので、帽子からマフラーからイヤーマフから手袋まで、完全防備でいるのに比べて。
 跡部はすっきりとしたラインのコートこそ着ているが、そのほかの防寒具は手袋のみだ。
「革って冷たくない?」
「別に」
 端的な返答だが、跡部の唇には笑みが浮かんだままだから。
 冷たい感じは全然しない。
 そういえば、どちらかといえば跡部は、今機嫌がいいみたいな気がすると神尾は思った。
 人込みとか嫌いな筈なのにと不思議に思って見据えていると、また跡部から眼差しが流れてくる。
 きつくて、綺麗な目だ。
「何だ」
「んー……」
「唸るな」
「唸ってんじゃねえよ。考えてただけ」
「何を」
 跡部の唇から、ふわりと白い息が零れる。
 全然寒そうに見えないけれど、やっぱり跡部の周りだって空気は冷たいんだよな、と当たり前の事を認識しながら神尾は言った。
「跡部はさ、願い事なんかないだろ?」
「ああ?」
「神様にお願いするようなこと何もなさそうじゃん。叶えたい事は全部自分でどうにかするって感じだし」
 人込み以外にもう一つ。
 初詣に跡部を誘っても、来ないだろうなと神尾が思っていた理由がこれだ。
 しかし跡部は神尾の予想外の返事を寄こしてきた。
「俺一人じゃどうにもならないことがあるだろうが」
 瞠った目で跡部を見据え、神尾は思わず大きな声を上げた。
「あんの?! そんなの?!」
「うるせえ……」
 跡部は眉を顰めたが神尾は構わず跡部に詰め寄る。
「お願い事とか、跡部にもあんの?」
「悪いか。俺にあったら」
「悪くないけど今死ぬほど驚いた!」
 跡部があからさまに不機嫌な顔になったが神尾は胸元に手を当てて深く息を吸って吐き出す。
 それが何なのか聞きたい気は勿論あったのだが、聞いたって跡部が答える筈がないと判ってもいる。
「……跡部一人じゃ出来ない事でも、神様なら叶えてくれそうな事なのか?」
「俺は神様なんざ信じちゃいねえよ」
「跡部ー……仮にもこれから初詣しようとしてる人間がそういう事言うかー?」
「叶えてくれんのは神様じゃねえって言ってんだよ。俺は」
 神様とやらには一応頼んでおくだけだと言った跡部を、神尾はじっと見つめた。
「じゃあ誰が跡部のお願いを叶えてくれるんだ?」
 言い終わるか言い終わらないかで。
 跡部が歩きながら身体を屈めてきて、神尾の唇をキスで掠めた。
「………、っ…、……」
 間近に見える跡部の長い睫毛の先端が、頬の上を軽く撫でる。
 唇だけでなくそこにもキスされたようで、神尾は続けざまに赤くなった。
「……あと……」
「お前が逃げなきゃいいんだよ」
 一生俺から、と。
 いっそ物騒な目で神尾を見据え、跡部は低く呟いた。
「逃がす気もないがな」
「跡部…?」
「もしお前が逃げたり、お前に何かあったらタダじゃおかねえ。これからあそこで俺がお願いしてやる内容だ」
 目前に近づいてきている神社の境内を指差して言った跡部に、神尾は叫んだ。
「それお願いじゃねえよっ!」
 神様脅すなよっ!と半泣きになった神尾に。
 跡部は再び機嫌のいい鮮やかな笑みを浮かべてみせるのだった。
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