How did you feel at your first kiss?
跡部がソフトクリームを舐めるところなんて見た事がない。
棒アイスを齧ったり、カップのアイスを木のスプーンですくって食べているのも、当然見た事がない。
でも神尾が跡部の家に行くようになって。
跡部の家の夕食をたまに一緒に食べるようになると。
どうやら跡部も家ではアイスを食べるのだという事を知るようになる。
跡部の家では食後に必ずデザートがつくのだ。
「デザートのない食事は食事じゃねえだろ」
そんな風に跡部は言うのだ。
そうして、神尾が跡部の家に行って食事をすると、必ず最後に一緒にデザートを食べる。
やたらと大きな皿の中央に、何だか宝石みたいに果物とかケーキとかが盛り付けられて。
それを先の平べったいやけにキラキラ光る銀色のスプーンで食べる。
アイスクリームって言ったら、それはグラスアラヴァニーユだって言いなおされた。
シャーベットって言ったらソルベだって言われた。
かき氷って言ったらグラニテだって言われる。
どれも甘くて美味しくてやたら綺麗で、もう名前なんか何でもいいかと思うから、神尾は喧嘩はしない。
跡部の家のデザートは、何だかやたらとキラキラしてる。
神尾はそれが気に入っていた。
アイスには必ずソースをかけて食べる。
それも毎日違う。
チョコレートだったり、マンゴーだったり、イチゴだったり、キャラメルだったり。
花の香りのするものだったり、少し苦くて、でもアイスにかけると不思議と美味しく感じるものだったり。
神尾がそういうアイスの食べ方を気に入ったのが判ったのか、跡部は神尾が遊びに行くと、食事をしない日でもアイスだけは用意しておいてくれるようになった。
跡部の家のアイスは気持ちが良い。
食べると、頭の中がふわふわになる。
甘くて、冷たくて、熱くなって、眠たくなる。
「…………アキラ。それクスリ一服盛られてるのと一緒」
呆れ返って言われた言葉の意味が神尾にはよく判らなかった。
「アイスクリームで酔わされて、その後あの人に何されてんの」
「酔わされてなんていねーって。食ってんのアイスだぜ?」
「かかってんのリキュールでしょ」
「なんだそれ? かかってんのってチョコとかキャラメルとかイチゴとか、」
「の、リキュール。でしょ」
神尾は無知だし。
跡部さんはつけ込むし。
伊武はそうぼやいて、それからぼやいて、更にぼやいて、ひたすらぼやいた。
「だいたいアキラは正月の甘酒でも、おかずの漬物でも、酔っちゃえるくらい酒弱いのに。酔っ払いのおじさんが近くにいても酔うし、予防接種の注射前のアルコール消毒だって、毎回あやしいっていうのに」
なんで気付かないのかなあ、信じられないよなあ、と憂鬱そうに繰り返す親友の綺麗な横顔を見ながら。
「え…、…でも…なんか跡部……」
呟いた言葉は呆気なくスルーされたけれど、神尾は何だかいろいろ思い出して顔を少し赤くする。
優しいのだ。
そういう時。
跡部の家のアイスを食べた後の、ふわふわで、くらくらで、熱くて眠たくてとろとろする神尾に跡部が。
額を触られたり、後ろ向きに抱きかかえられて座ったり、髪を撫でられたり。
距離が近くて。
いつもよりずっとくっついていて。
触られて。
いつもよりそっとあちこちを。
こっち向けって言われて、ずっと顔を見続けて。
もっと欲しいかって言われて、アイスを食べさせて貰ったり。
きっと覚えてねえなって言われて、何か嬉しい言葉をいっぱいいっぱい言われたり。
確かにアイスにかかっている綺麗な色のソースは日に日に量が増えていっている気もするし、食えって言ってアイスを勧める時の跡部の顔はちょっとなんだか悪巧みでもしてそうな悪い笑い方をするけれど。
それでも跡部は綺麗だし。
それでもアイスは美味しいし。
それでも。
その後の時間は、いつもいつも気持ちが良いから。
「今日も部活終わったら跡部さん家に行くの?」
「……え、……うん」
不健全だなあ伊武が溜息をつく。
不健全なのかなあと神尾は赤くなる。
アイスクリームを二人で食べるという話なんですが。
棒アイスを齧ったり、カップのアイスを木のスプーンですくって食べているのも、当然見た事がない。
でも神尾が跡部の家に行くようになって。
跡部の家の夕食をたまに一緒に食べるようになると。
どうやら跡部も家ではアイスを食べるのだという事を知るようになる。
跡部の家では食後に必ずデザートがつくのだ。
「デザートのない食事は食事じゃねえだろ」
そんな風に跡部は言うのだ。
そうして、神尾が跡部の家に行って食事をすると、必ず最後に一緒にデザートを食べる。
やたらと大きな皿の中央に、何だか宝石みたいに果物とかケーキとかが盛り付けられて。
それを先の平べったいやけにキラキラ光る銀色のスプーンで食べる。
アイスクリームって言ったら、それはグラスアラヴァニーユだって言いなおされた。
シャーベットって言ったらソルベだって言われた。
かき氷って言ったらグラニテだって言われる。
どれも甘くて美味しくてやたら綺麗で、もう名前なんか何でもいいかと思うから、神尾は喧嘩はしない。
跡部の家のデザートは、何だかやたらとキラキラしてる。
神尾はそれが気に入っていた。
アイスには必ずソースをかけて食べる。
それも毎日違う。
チョコレートだったり、マンゴーだったり、イチゴだったり、キャラメルだったり。
花の香りのするものだったり、少し苦くて、でもアイスにかけると不思議と美味しく感じるものだったり。
神尾がそういうアイスの食べ方を気に入ったのが判ったのか、跡部は神尾が遊びに行くと、食事をしない日でもアイスだけは用意しておいてくれるようになった。
跡部の家のアイスは気持ちが良い。
食べると、頭の中がふわふわになる。
甘くて、冷たくて、熱くなって、眠たくなる。
「…………アキラ。それクスリ一服盛られてるのと一緒」
呆れ返って言われた言葉の意味が神尾にはよく判らなかった。
「アイスクリームで酔わされて、その後あの人に何されてんの」
「酔わされてなんていねーって。食ってんのアイスだぜ?」
「かかってんのリキュールでしょ」
「なんだそれ? かかってんのってチョコとかキャラメルとかイチゴとか、」
「の、リキュール。でしょ」
神尾は無知だし。
跡部さんはつけ込むし。
伊武はそうぼやいて、それからぼやいて、更にぼやいて、ひたすらぼやいた。
「だいたいアキラは正月の甘酒でも、おかずの漬物でも、酔っちゃえるくらい酒弱いのに。酔っ払いのおじさんが近くにいても酔うし、予防接種の注射前のアルコール消毒だって、毎回あやしいっていうのに」
なんで気付かないのかなあ、信じられないよなあ、と憂鬱そうに繰り返す親友の綺麗な横顔を見ながら。
「え…、…でも…なんか跡部……」
呟いた言葉は呆気なくスルーされたけれど、神尾は何だかいろいろ思い出して顔を少し赤くする。
優しいのだ。
そういう時。
跡部の家のアイスを食べた後の、ふわふわで、くらくらで、熱くて眠たくてとろとろする神尾に跡部が。
額を触られたり、後ろ向きに抱きかかえられて座ったり、髪を撫でられたり。
距離が近くて。
いつもよりずっとくっついていて。
触られて。
いつもよりそっとあちこちを。
こっち向けって言われて、ずっと顔を見続けて。
もっと欲しいかって言われて、アイスを食べさせて貰ったり。
きっと覚えてねえなって言われて、何か嬉しい言葉をいっぱいいっぱい言われたり。
確かにアイスにかかっている綺麗な色のソースは日に日に量が増えていっている気もするし、食えって言ってアイスを勧める時の跡部の顔はちょっとなんだか悪巧みでもしてそうな悪い笑い方をするけれど。
それでも跡部は綺麗だし。
それでもアイスは美味しいし。
それでも。
その後の時間は、いつもいつも気持ちが良いから。
「今日も部活終わったら跡部さん家に行くの?」
「……え、……うん」
不健全だなあ伊武が溜息をつく。
不健全なのかなあと神尾は赤くなる。
アイスクリームを二人で食べるという話なんですが。
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