How did you feel at your first kiss?
挑発のつもりは全くなかった。
観月だって限界だったのだ。
真剣に優しくされて、本気で大事にされて、無条件に信頼されて。
赤澤に、そうされればされるほど、それよりもっとと望んでしまいそうな自分の飢餓感が怖かっただけだ。
いつ、これが取り上げられてしまうのか。
いつ、もう、そうされなくなってしまうのか。
そんなことばかりを考えてしまう。
望むのはいつでも自分ばかりで、与えてくれるのはいつも彼ばかりで。
だから観月は、自分には赤澤に与えられるものは何もないし、赤澤には観月に望むものは何もない、そんな風に考えてしまう。
そんな風に考えたから、言ったのだ。
「あなたは僕を側に置いておけば満足なんですね」
飾っておけばそれでいい。
連れて歩くには良いなんていう評価も観月自身聞き慣れた。
「観月」
「………………」
しかし赤澤は、そう口にしたきり黙った。
言われた言葉の意味を考えるように押し黙った。
確かそれまでは、当たり障りのない話を交わしていた筈だった。
ルドルフの寮の、観月の部屋で。
他愛のない、会話を。
「………………」
沈黙が部屋に満ちる。
無表情の赤澤は、観月の目には見知らぬ男のように見えた。
こんな空気になってしまった事は、観月の予想の範疇外だった。
「………観月?」
こんな声で呼ばれる事も。
「俺は…お前にそう思わせたのか」
抑揚のない問いかけや、きつくなった視線。
観月は小さく息を詰める。
ベッドによりかかるようにして床に座っていた赤澤が、立てた片膝に乗せた右手で拳をつくる。
口元を覆い、舌打ちのような吐息をついた後、赤澤のその拳は床を強く打った。
カーペットに吸音されて、音はしない。
でも明らかな振動に観月は片を揺らす。
「俺は、お前を無くすような真似は出来ないし、しない」
「……………」
「でも、それはお前を抱かないっていう意味じゃねえんだよ」
決して声を荒げたりはしないけれど、赤澤が酷く機嫌を損ねている事は観月にも理解出来た。
机に向かっていた観月の元へ、肉食獣の敏捷さで立った赤澤に、観月は腕を掴まれてベッドへと放られる。
「……、…っ…」
「お前の口で言われて、許せる台詞じゃねえよ。観月」
餓えたように食らいつかれた。
唇に。
手首を握り締められ、シーツに押さえつけられた。
観月に口付けながら、赤澤は片膝で寝具の上に乗り上がってきた。
キスはきつい。
舌が痛い。
息が混ざって、唾液が混ざって、観月の唇は赤澤の唇と密着し、卑猥に歪んだ。
「…、…ぅ…、…」
この男に。
執着される相手は、いったいどんな子なのだろうかと、思った事がある。
「……………」
「……っ…、…は…、…、…」
「……………」
「ンっ、………、…」
吐いた息も、吸い込む息も熱くて。
苦しくて。
もがいてでも逃げたい。
力で押さえつけられて、唇をむさぼられて。
茹だったように指先までじんじんと痺れて、顔なんか真っ赤だろうと容易に判るだけに居たたまれない。
「…………っ……く…」
「観月。嫌がってんじゃないんだったら暴れるな」
「………ゃ……」
観月、と窘めるような赤澤の呼びかけに観月は泣きたくなった。
もう、赤澤の手は信じられないほど優しく観月の身体に触れている。
あれほど強く拘束されていた手首が甘く握り込まれて、先ほどまで締め付けていた所を労るように長い指の先で撫でられている。
強引なまま。
押さえつけられて、力づくで、それなのに。
「赤、澤………」
「ああ。俺だ」
えらそうで。
「観月」
優しくて。
「好きだ」
熱を帯びた声。
力が抜けた。
「観月」
赤澤の手のひらが掠っただけで、神経を直接握り潰されたみたいに観月の中で何かが溶ける。
少しも痛くはなく、でもひどく辛い。
「観月……」
「………ャ…、……」
泣き出さないのが奇跡だ。
そう思っても。
自分を追い詰める一方の赤澤を、罵る言葉なんか何一つ観月の手にはない。
「…っ…、…」
「観月」
赤澤の手のひらで、観月は目元を拭われた。
泣いてなんかいない、ただ泣きそうなだけでいるのに。
察して宛がわれた手に涙が呼ばれてしまう。
「…………っ…ぅ」
「嫌か?」
「……、……、…っ…」
「ごめんな」
俺はどうしてもしたいと赤澤は言って、観月の足に手をかける。
迷わない手が、躊躇わない指先が、観月に触れる。
その手に服越しに包まれて、観月はしゃくりあげるように喉を詰まらせた。
「お前が、俺でいく所が見たい」
「………ッ……、…」
囁くようであったのに。
赤澤の、低い、その声に。
観月の神経は今度こそ本当に、赤澤の手中で、全てを砕かれた。
観月だって限界だったのだ。
真剣に優しくされて、本気で大事にされて、無条件に信頼されて。
赤澤に、そうされればされるほど、それよりもっとと望んでしまいそうな自分の飢餓感が怖かっただけだ。
いつ、これが取り上げられてしまうのか。
いつ、もう、そうされなくなってしまうのか。
そんなことばかりを考えてしまう。
望むのはいつでも自分ばかりで、与えてくれるのはいつも彼ばかりで。
だから観月は、自分には赤澤に与えられるものは何もないし、赤澤には観月に望むものは何もない、そんな風に考えてしまう。
そんな風に考えたから、言ったのだ。
「あなたは僕を側に置いておけば満足なんですね」
飾っておけばそれでいい。
連れて歩くには良いなんていう評価も観月自身聞き慣れた。
「観月」
「………………」
しかし赤澤は、そう口にしたきり黙った。
言われた言葉の意味を考えるように押し黙った。
確かそれまでは、当たり障りのない話を交わしていた筈だった。
ルドルフの寮の、観月の部屋で。
他愛のない、会話を。
「………………」
沈黙が部屋に満ちる。
無表情の赤澤は、観月の目には見知らぬ男のように見えた。
こんな空気になってしまった事は、観月の予想の範疇外だった。
「………観月?」
こんな声で呼ばれる事も。
「俺は…お前にそう思わせたのか」
抑揚のない問いかけや、きつくなった視線。
観月は小さく息を詰める。
ベッドによりかかるようにして床に座っていた赤澤が、立てた片膝に乗せた右手で拳をつくる。
口元を覆い、舌打ちのような吐息をついた後、赤澤のその拳は床を強く打った。
カーペットに吸音されて、音はしない。
でも明らかな振動に観月は片を揺らす。
「俺は、お前を無くすような真似は出来ないし、しない」
「……………」
「でも、それはお前を抱かないっていう意味じゃねえんだよ」
決して声を荒げたりはしないけれど、赤澤が酷く機嫌を損ねている事は観月にも理解出来た。
机に向かっていた観月の元へ、肉食獣の敏捷さで立った赤澤に、観月は腕を掴まれてベッドへと放られる。
「……、…っ…」
「お前の口で言われて、許せる台詞じゃねえよ。観月」
餓えたように食らいつかれた。
唇に。
手首を握り締められ、シーツに押さえつけられた。
観月に口付けながら、赤澤は片膝で寝具の上に乗り上がってきた。
キスはきつい。
舌が痛い。
息が混ざって、唾液が混ざって、観月の唇は赤澤の唇と密着し、卑猥に歪んだ。
「…、…ぅ…、…」
この男に。
執着される相手は、いったいどんな子なのだろうかと、思った事がある。
「……………」
「……っ…、…は…、…、…」
「……………」
「ンっ、………、…」
吐いた息も、吸い込む息も熱くて。
苦しくて。
もがいてでも逃げたい。
力で押さえつけられて、唇をむさぼられて。
茹だったように指先までじんじんと痺れて、顔なんか真っ赤だろうと容易に判るだけに居たたまれない。
「…………っ……く…」
「観月。嫌がってんじゃないんだったら暴れるな」
「………ゃ……」
観月、と窘めるような赤澤の呼びかけに観月は泣きたくなった。
もう、赤澤の手は信じられないほど優しく観月の身体に触れている。
あれほど強く拘束されていた手首が甘く握り込まれて、先ほどまで締め付けていた所を労るように長い指の先で撫でられている。
強引なまま。
押さえつけられて、力づくで、それなのに。
「赤、澤………」
「ああ。俺だ」
えらそうで。
「観月」
優しくて。
「好きだ」
熱を帯びた声。
力が抜けた。
「観月」
赤澤の手のひらが掠っただけで、神経を直接握り潰されたみたいに観月の中で何かが溶ける。
少しも痛くはなく、でもひどく辛い。
「観月……」
「………ャ…、……」
泣き出さないのが奇跡だ。
そう思っても。
自分を追い詰める一方の赤澤を、罵る言葉なんか何一つ観月の手にはない。
「…っ…、…」
「観月」
赤澤の手のひらで、観月は目元を拭われた。
泣いてなんかいない、ただ泣きそうなだけでいるのに。
察して宛がわれた手に涙が呼ばれてしまう。
「…………っ…ぅ」
「嫌か?」
「……、……、…っ…」
「ごめんな」
俺はどうしてもしたいと赤澤は言って、観月の足に手をかける。
迷わない手が、躊躇わない指先が、観月に触れる。
その手に服越しに包まれて、観月はしゃくりあげるように喉を詰まらせた。
「お前が、俺でいく所が見たい」
「………ッ……、…」
囁くようであったのに。
赤澤の、低い、その声に。
観月の神経は今度こそ本当に、赤澤の手中で、全てを砕かれた。
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