How did you feel at your first kiss?
くだけてシーツにくずれるしかない腰を、背後から固い腕に抱き込まれる。
それまで海堂の腰を鷲掴みにしていた大きな手のひらが、海堂の腹部を滑って支えてくる。
どこか慣れないようなその刺激に怯える為、海堂はきつく唇を噛み締めてシーツに顔を伏せた。
「…、ッ…、……」
「………海堂…?」
乱れた乾の呼気が呼びかけと一緒に耳に当たって、海堂は堪えきれずに、か細い声音を喉から洩らす。
「…………く………ぅ……」
「海堂」
少し慌てたように乾は海堂の後頭部に顔を寄せてきた。
宥める仕草で後ろ髪を撫でられ、大丈夫かと低い声で囁かれては。
それはもう追い討ちでしかない。
「海堂?」
心配げな声に引きずられて。
海堂はシーツに顔を伏せたまま、肩越しに視線だけを乾へと差し向ける。
「……ぃ………」
名前も呼びきれないまま。
潤みきった挙句に、ぼろぼろと零れてしまった瞳からの液体は、余韻の強さに他ならない。
それでも海堂のそんな有様を目の当たりにしてしまった乾は、相当慌てたようだった。
「どこか辛い? 海堂?」
「………………」
首を左右に振った海堂の所作だけでは乾は納得しなかった。
だから海堂は自分の頬へと伸ばされてきた乾の手に顔を摺り寄せるようにした。
涙を拭おうとしていた手が緊張でもしたかのように、びくりと跳ねる。
「……海堂?」
「手………」
「………なに?」
顔を近づけられ、小さな声で聞かれて。
海堂は乾の手のひらに片頬を預けて息をつく。
「……サーブ練習……どんだけやったん…ですか……」
「え?」
骨が太くなって、筋肉が固くなって、肉刺の出来た掌、張り詰めた皮膚の強靭さ。
高みに行き着く為のきざはしを駆け上がる最期の時には、今までにない力で拘束された。
否が応でも海堂は体感させられる。
乾の身体を。
少しでも変化があれば、何もかも赤裸々に。
「悪い。どこか痛ませたか?」
乾は海堂の言わんとしているところをすぐに悟ったようで。
神妙な問いかけをしてきたので。
海堂は濡れた目できつく乾を見据えた。
「……んな…ヤワじゃね……」
「いや、ヤワとかどうとかの話じゃなくてさ。海堂」
知らぬうちに何か大事をしでかしたとでも言いたげな乾の態度に、海堂は乾の身体の下で身を捩って仰向けになった。
多分腰の真裏には乾の指の痕がある。
最期に、握りつぶされそうに掴まれていたあたり。
次第に痺れるように疼く刺激がそれを海堂に知らしめているから、とりあえず今は乾の目から隠してしまった。
海堂の言いたい事は、そんな話ではないからだ。
「………………」
仰向けになって見上げた乾の手を、海堂は改めて正面からそっと手にとって見つめる。
骨ばった指と、手の甲。
指の腹も、付け根も、ひどく固い。
乾はデータを詰める時よりも、身体を動かしている時の方が、より一層ストイックになる。
海堂は部内でも練習量は常に一番だと言われていたが、それは目につく状況が多いというだけで、実際乾がこなしている量にはとても及んでいない。
今まるで突然に気づいたみたいに、乾の身体から知る事がある。
強くなった力や、強固になっていく四肢。
だからといってそんな乾に、傷つけられたり、ついていけなくなるような自分じゃない事くらい判れと海堂は思う。
「……海堂」
「………………」
海堂の気の済むまで、その手を預けてくれていた乾だから。
判らない筈もない。
「俺の手だろ?」
「………当たり前のこと言うな」
そして抱き締めてきて。
「それでお前は俺の海堂?」
「当たり前のこと何遍も言わせんな…っ!」
笑みの交じる、低い声は優しい。
海堂が羞恥に任せて怒鳴りつけても、穏やかで深い抱擁は緩まない。
幸せそうな相手や、幸せな自分。
勝つためにするべき事で、何かの変化があったとしても。
それらは全て幸せの手の内だ。
それまで海堂の腰を鷲掴みにしていた大きな手のひらが、海堂の腹部を滑って支えてくる。
どこか慣れないようなその刺激に怯える為、海堂はきつく唇を噛み締めてシーツに顔を伏せた。
「…、ッ…、……」
「………海堂…?」
乱れた乾の呼気が呼びかけと一緒に耳に当たって、海堂は堪えきれずに、か細い声音を喉から洩らす。
「…………く………ぅ……」
「海堂」
少し慌てたように乾は海堂の後頭部に顔を寄せてきた。
宥める仕草で後ろ髪を撫でられ、大丈夫かと低い声で囁かれては。
それはもう追い討ちでしかない。
「海堂?」
心配げな声に引きずられて。
海堂はシーツに顔を伏せたまま、肩越しに視線だけを乾へと差し向ける。
「……ぃ………」
名前も呼びきれないまま。
潤みきった挙句に、ぼろぼろと零れてしまった瞳からの液体は、余韻の強さに他ならない。
それでも海堂のそんな有様を目の当たりにしてしまった乾は、相当慌てたようだった。
「どこか辛い? 海堂?」
「………………」
首を左右に振った海堂の所作だけでは乾は納得しなかった。
だから海堂は自分の頬へと伸ばされてきた乾の手に顔を摺り寄せるようにした。
涙を拭おうとしていた手が緊張でもしたかのように、びくりと跳ねる。
「……海堂?」
「手………」
「………なに?」
顔を近づけられ、小さな声で聞かれて。
海堂は乾の手のひらに片頬を預けて息をつく。
「……サーブ練習……どんだけやったん…ですか……」
「え?」
骨が太くなって、筋肉が固くなって、肉刺の出来た掌、張り詰めた皮膚の強靭さ。
高みに行き着く為のきざはしを駆け上がる最期の時には、今までにない力で拘束された。
否が応でも海堂は体感させられる。
乾の身体を。
少しでも変化があれば、何もかも赤裸々に。
「悪い。どこか痛ませたか?」
乾は海堂の言わんとしているところをすぐに悟ったようで。
神妙な問いかけをしてきたので。
海堂は濡れた目できつく乾を見据えた。
「……んな…ヤワじゃね……」
「いや、ヤワとかどうとかの話じゃなくてさ。海堂」
知らぬうちに何か大事をしでかしたとでも言いたげな乾の態度に、海堂は乾の身体の下で身を捩って仰向けになった。
多分腰の真裏には乾の指の痕がある。
最期に、握りつぶされそうに掴まれていたあたり。
次第に痺れるように疼く刺激がそれを海堂に知らしめているから、とりあえず今は乾の目から隠してしまった。
海堂の言いたい事は、そんな話ではないからだ。
「………………」
仰向けになって見上げた乾の手を、海堂は改めて正面からそっと手にとって見つめる。
骨ばった指と、手の甲。
指の腹も、付け根も、ひどく固い。
乾はデータを詰める時よりも、身体を動かしている時の方が、より一層ストイックになる。
海堂は部内でも練習量は常に一番だと言われていたが、それは目につく状況が多いというだけで、実際乾がこなしている量にはとても及んでいない。
今まるで突然に気づいたみたいに、乾の身体から知る事がある。
強くなった力や、強固になっていく四肢。
だからといってそんな乾に、傷つけられたり、ついていけなくなるような自分じゃない事くらい判れと海堂は思う。
「……海堂」
「………………」
海堂の気の済むまで、その手を預けてくれていた乾だから。
判らない筈もない。
「俺の手だろ?」
「………当たり前のこと言うな」
そして抱き締めてきて。
「それでお前は俺の海堂?」
「当たり前のこと何遍も言わせんな…っ!」
笑みの交じる、低い声は優しい。
海堂が羞恥に任せて怒鳴りつけても、穏やかで深い抱擁は緩まない。
幸せそうな相手や、幸せな自分。
勝つためにするべき事で、何かの変化があったとしても。
それらは全て幸せの手の内だ。
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