How did you feel at your first kiss?
全国大会の会場で、立海大付属中の、紳士こと柳生比呂士が。
単身おもむろに青春学園の面々の前に歩み寄ってきて。
丁重な目礼をした後、にこやかな笑顔を浮かべてこう言った。
「海堂くん。お元気ですか」
青学のテニス部員達は、がくっと顎を下に落とした。
何故に海堂くん。
「………っす」
しかも海堂くんが返事した。
よって更に顎がもっと下に落ちていく。
何事だ海堂くん。
返事した。
何事だ!?と、次第にもっと大きな声で、一致団結、心の中で叫び出す青学のテニス部員達である。
さてそんな中、彼らのうちの何人かは。
その後すぐに物言いた気な視線を、柳生にでなく、海堂にでもなく、別の人間へと一斉に差し向けた。
密かに注目を集めている男は、一見無表情だ。
柳生と海堂が短い言葉ながらも会話を始めているその光景を見てはいるが、少なくとも判りやすいリアクションは何ひとつとらない。
でも、と周囲の人間は考えている。
もしこの見慣れない現状の謂れと理由が判るとしたら。
それはやはり、彼の口から出るのが最も自然な筈だ。
間違いなく。
そして、そんな期待を一身に受けている男。
青学の頭脳、乾貞治は、おもむろに軽い溜息をつく。
周囲はにわかにどよめいた。
柳生と海堂、この組み合わせの訳を皆は知りたい。
しかしそれをまた、どう聞いたらいいものか。
躊躇しつつも好奇心に満ち満ちた視線を、彼らは次第に遠慮なく乾へと突き立てた。
長身の彼は若干背中を丸めるようにしてやんわりと後ろ首に手をやって。
再びの溜息である。
「海堂、とられたの?」
その場に、声にならない阿鼻叫喚を充満させたのは、突然に放られた、この何の取り繕いもない不二の言葉だった。
乾の横に並んで、不二はにこにこと海堂達を見つめて。
乾に向けてさらさらと言葉を続けた。
「どうしたんだい乾。きみともあろう男がいったいどんなミスしたの」
「…………不二」
「…何だ。別に落ち込んでる訳じゃないんだ」
聡い青学の天才は、ちらりと寄こしてきた視線で乾の表情を的確によんで。
そんな事を言った。
乾は三度目の嘆息である。
「……海堂は何でもこの間、柳生と、些細で偶然な出会いがあったらしくてね…」
それはちゃんと聞いてるんだけど、どうもねえ、と乾は言葉を濁した。
不二が呆れ返ったように笑顔を深める。
「ねえ乾。何もそんな老成しきったような態度で妬かなくってもいいじゃない」
「老成ねえ…」
「もっと判りやすく表に出せば?」
「んー…そんなに判りにくいか俺」
「まどろっこしいよ。海堂が他の男に懐いてるの見たくないなら、さっさと取り戻してくればいいのに」
「うーん……いきなり割って入ったら海堂怒るだろうなあ…」
「…本当、相当鬱陶しいね、きみ」
穏やかな笑顔で毒を吐く不二に。
強引に背中を押し出された乾は、悪あがきのように、肩越しから不二を振り返った。
「黙って強引に海堂を柳生から引き剥がして、担いでここに持って帰ってきたら、海堂怒るかな?」
「いいから早く行きなよ乾」
「威嚇もしておきたいんだがなあ…折角だから」
「乾」
「判った判った」
はいはい、と。
開眼直前の不二にホールドアップのリアクションをとって乾は海堂と柳生の元へと足を向ける。
それからさ、と乾は背を向けたまま不二に告げる。
「不二。俺が彼らに声かけたらさ」
「なに?」
「その直後5秒でいいから、みんなの視線を俺達じゃない方に集めてくれないか」
「そんな魔法みたいなこと頼む?」
「不二には簡単なことだろ。5秒でいいから」
それから不二も、こっちは見ないでな、と。
乾は当然のようにそんな事を言った。
5秒で奪還するといえば、その行動は大概想像がつく。
海堂に叩かれなきゃいいけど、と不二は思って忍び笑いを受かべるのだった。
単身おもむろに青春学園の面々の前に歩み寄ってきて。
丁重な目礼をした後、にこやかな笑顔を浮かべてこう言った。
「海堂くん。お元気ですか」
青学のテニス部員達は、がくっと顎を下に落とした。
何故に海堂くん。
「………っす」
しかも海堂くんが返事した。
よって更に顎がもっと下に落ちていく。
何事だ海堂くん。
返事した。
何事だ!?と、次第にもっと大きな声で、一致団結、心の中で叫び出す青学のテニス部員達である。
さてそんな中、彼らのうちの何人かは。
その後すぐに物言いた気な視線を、柳生にでなく、海堂にでもなく、別の人間へと一斉に差し向けた。
密かに注目を集めている男は、一見無表情だ。
柳生と海堂が短い言葉ながらも会話を始めているその光景を見てはいるが、少なくとも判りやすいリアクションは何ひとつとらない。
でも、と周囲の人間は考えている。
もしこの見慣れない現状の謂れと理由が判るとしたら。
それはやはり、彼の口から出るのが最も自然な筈だ。
間違いなく。
そして、そんな期待を一身に受けている男。
青学の頭脳、乾貞治は、おもむろに軽い溜息をつく。
周囲はにわかにどよめいた。
柳生と海堂、この組み合わせの訳を皆は知りたい。
しかしそれをまた、どう聞いたらいいものか。
躊躇しつつも好奇心に満ち満ちた視線を、彼らは次第に遠慮なく乾へと突き立てた。
長身の彼は若干背中を丸めるようにしてやんわりと後ろ首に手をやって。
再びの溜息である。
「海堂、とられたの?」
その場に、声にならない阿鼻叫喚を充満させたのは、突然に放られた、この何の取り繕いもない不二の言葉だった。
乾の横に並んで、不二はにこにこと海堂達を見つめて。
乾に向けてさらさらと言葉を続けた。
「どうしたんだい乾。きみともあろう男がいったいどんなミスしたの」
「…………不二」
「…何だ。別に落ち込んでる訳じゃないんだ」
聡い青学の天才は、ちらりと寄こしてきた視線で乾の表情を的確によんで。
そんな事を言った。
乾は三度目の嘆息である。
「……海堂は何でもこの間、柳生と、些細で偶然な出会いがあったらしくてね…」
それはちゃんと聞いてるんだけど、どうもねえ、と乾は言葉を濁した。
不二が呆れ返ったように笑顔を深める。
「ねえ乾。何もそんな老成しきったような態度で妬かなくってもいいじゃない」
「老成ねえ…」
「もっと判りやすく表に出せば?」
「んー…そんなに判りにくいか俺」
「まどろっこしいよ。海堂が他の男に懐いてるの見たくないなら、さっさと取り戻してくればいいのに」
「うーん……いきなり割って入ったら海堂怒るだろうなあ…」
「…本当、相当鬱陶しいね、きみ」
穏やかな笑顔で毒を吐く不二に。
強引に背中を押し出された乾は、悪あがきのように、肩越しから不二を振り返った。
「黙って強引に海堂を柳生から引き剥がして、担いでここに持って帰ってきたら、海堂怒るかな?」
「いいから早く行きなよ乾」
「威嚇もしておきたいんだがなあ…折角だから」
「乾」
「判った判った」
はいはい、と。
開眼直前の不二にホールドアップのリアクションをとって乾は海堂と柳生の元へと足を向ける。
それからさ、と乾は背を向けたまま不二に告げる。
「不二。俺が彼らに声かけたらさ」
「なに?」
「その直後5秒でいいから、みんなの視線を俺達じゃない方に集めてくれないか」
「そんな魔法みたいなこと頼む?」
「不二には簡単なことだろ。5秒でいいから」
それから不二も、こっちは見ないでな、と。
乾は当然のようにそんな事を言った。
5秒で奪還するといえば、その行動は大概想像がつく。
海堂に叩かれなきゃいいけど、と不二は思って忍び笑いを受かべるのだった。
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