How did you feel at your first kiss?
褐色の肌をしたこの男は、最近何かと自分に触れる。
恋人同士でも何でもないのに、今日などはまるでキスでもするかのように。
指先で頬を撫で、顎にも触れた。
そこで手を止め、じっと見つめてきて。
「あ、わりぃ」
「………………」
ぐっと自分が唇を引き結んだのに気付いて、呆気なく詫び、手を離していく。
「綺麗だと思ってつい」
「……………き」
「き?」
「綺麗なんて言うなと何度言ったら……!」
「あ?……ああ、そうだったか?」
わざとならたいしたものだが、この男は平然とそんな事を言い、あっさり謝った。
「悪いな。当たり前のこと改めて、何度も言う事はないわな」
「…………、……」
綺麗だと。
今日の天気を口にするように、何かにつけ彼は自分に向けてその言葉を使う。
自分の性格の悪さを知った上で、それを口にしてくる相手を、彼しか知らない。
「どうした? 観月」
「…………………」
「綺麗な顔そんなにしてよ」
また言った。
まだ言った。
そんなこと。
「………赤澤部長。あなたは人の顔の事あれこれ口出しすぎです」
「あ? まあ、否定はしないけど」
感情起伏が激しいタイプなのに、案外と冷静で。
勝手なようでいて、人の話にきちんと耳を傾ける。
いい加減だとばかり思っていたのに、根が真面目で。
「…………………」
テニスだって。
最初は特筆するような能力があるようにはとても見えなかったのに。
何故この男が部長なんだと呆れていたのに。
今はその自分が、上辺だけの呼びかけでも何でもなく、心から、彼を。
部長と呼んでいる。
部長と信頼してもいる。
「俺は、別に観月と違って綺麗なものが好きなわけじゃねーよ」
フランクな接触。
気安い所作。
向けられる笑顔。
触れられる。
見つめられる。
どうにかなる。
「お前の事が好きなんだ」
そんな風に簡単に言った。
もう本当に悔しくて。
どうしてやろうかと睨みつけたつもりが、目からは涙が滲んでくる。
「………綺麗だなあ……お前」
どこか痛そうに赤澤は微笑み、腕を伸ばしてきた。
長い、腕。
抱き締められた。
痛い。
「…観月」
熱い。
「…………………」
放熱しているのは赤澤、痛いのはきっとお互い様。
悔しいから言葉なんて使うのは止めた。
本当に小さく、彼の耳元でしゃくりあげてやった。
「………みづ、……」
平然と自分に触れてきた彼が、簡単に自分を抱き潰せるような彼が、狼狽え、煽られ、その不安定な焦燥感が伝わってきて少しだけ胸をすく。
こういう男には、言葉よりも態度で判らせるのがいいのだきっと。
簡単に好きだなんて言えた事を後悔するくらい。
欲しがって、少しはおかしくなりなさいと。
抱き込まれた熱っぽい腕の中で思う。
恋人同士でも何でもないのに、今日などはまるでキスでもするかのように。
指先で頬を撫で、顎にも触れた。
そこで手を止め、じっと見つめてきて。
「あ、わりぃ」
「………………」
ぐっと自分が唇を引き結んだのに気付いて、呆気なく詫び、手を離していく。
「綺麗だと思ってつい」
「……………き」
「き?」
「綺麗なんて言うなと何度言ったら……!」
「あ?……ああ、そうだったか?」
わざとならたいしたものだが、この男は平然とそんな事を言い、あっさり謝った。
「悪いな。当たり前のこと改めて、何度も言う事はないわな」
「…………、……」
綺麗だと。
今日の天気を口にするように、何かにつけ彼は自分に向けてその言葉を使う。
自分の性格の悪さを知った上で、それを口にしてくる相手を、彼しか知らない。
「どうした? 観月」
「…………………」
「綺麗な顔そんなにしてよ」
また言った。
まだ言った。
そんなこと。
「………赤澤部長。あなたは人の顔の事あれこれ口出しすぎです」
「あ? まあ、否定はしないけど」
感情起伏が激しいタイプなのに、案外と冷静で。
勝手なようでいて、人の話にきちんと耳を傾ける。
いい加減だとばかり思っていたのに、根が真面目で。
「…………………」
テニスだって。
最初は特筆するような能力があるようにはとても見えなかったのに。
何故この男が部長なんだと呆れていたのに。
今はその自分が、上辺だけの呼びかけでも何でもなく、心から、彼を。
部長と呼んでいる。
部長と信頼してもいる。
「俺は、別に観月と違って綺麗なものが好きなわけじゃねーよ」
フランクな接触。
気安い所作。
向けられる笑顔。
触れられる。
見つめられる。
どうにかなる。
「お前の事が好きなんだ」
そんな風に簡単に言った。
もう本当に悔しくて。
どうしてやろうかと睨みつけたつもりが、目からは涙が滲んでくる。
「………綺麗だなあ……お前」
どこか痛そうに赤澤は微笑み、腕を伸ばしてきた。
長い、腕。
抱き締められた。
痛い。
「…観月」
熱い。
「…………………」
放熱しているのは赤澤、痛いのはきっとお互い様。
悔しいから言葉なんて使うのは止めた。
本当に小さく、彼の耳元でしゃくりあげてやった。
「………みづ、……」
平然と自分に触れてきた彼が、簡単に自分を抱き潰せるような彼が、狼狽え、煽られ、その不安定な焦燥感が伝わってきて少しだけ胸をすく。
こういう男には、言葉よりも態度で判らせるのがいいのだきっと。
簡単に好きだなんて言えた事を後悔するくらい。
欲しがって、少しはおかしくなりなさいと。
抱き込まれた熱っぽい腕の中で思う。
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