How did you feel at your first kiss?
待ち合わせ場所は店の前だった。
珍しく率先して先に中に入ったのが神尾で、その後についていったのが跡部。
さっぱり判らねえとメニューを放ったのが跡部で、ドリンクバー2つと秋のステーキセットを2つ頼んだのが神尾。
オーダーした物がやってくるなりリズムにのった神尾と、俺様の美技にでなくお子様の食べっぷりに酔ってしまった跡部である。
「ご飯おかわり!」
「………ご飯と肉とスープおかわりの間違いだろうが。おい、お前、顔についてる」
「なにが?」
「ご飯と肉とスープがだ!」
跡部が怒鳴り、神尾は笑う。
「跡部がご飯とか言うの可愛いな!」
「……いいから拭け!」
「拭いて」
「……………てめえ」
「駄目?…じゃあしょうがないから追加注文ついでにあのお姉ちゃんに…」
「ふざけんな…!」
結局ペーパーナプキンで神尾の頬やら口元を拭う跡部だ。
そう、跡部だ。
確かにあれは、紛うかたなき我らがぶちょう。
跡部様がふぁみりーれすとらんにいらっしゃった。
ショックのあまりに時々平仮名。
そんな氷帝テニス部レギュラー陣の目の前で、跡部は黒いジャージの恋人と、いちゃいちゃいちゃいちゃしてらっしゃった。
「激ダサ」
最近この台詞は二人同時で言われる事が多い。
今日もとても綺麗にハモった。
「ですね。宍戸さん」
「……………」
にこにこと微笑む鳳と、がっくり肩を落とす宍戸と。
「ラブい…」
そう確かにその二人はラブいんだが、向日のこの台詞はひとまず隣の隣の隣のテーブルにいる跡部と神尾に向けて放たれている。
「跡部、ママじゃん~」
ジローはそう言ってケラケラ笑って突然眠った。
「………うちんとこの部長、ほんまこういうとこ似合わへんなあ」
苦みばしった声で言った忍足。
ウス、と思わず一人それに返事をしてしまった樺地。
かくして跡部と神尾の初ファミレスデートは、偶然居合わせ来賓となってしまった仲間達に見守られ、由々しくも賑やかに、執り行われる事になったのであった。
珍しく率先して先に中に入ったのが神尾で、その後についていったのが跡部。
さっぱり判らねえとメニューを放ったのが跡部で、ドリンクバー2つと秋のステーキセットを2つ頼んだのが神尾。
オーダーした物がやってくるなりリズムにのった神尾と、俺様の美技にでなくお子様の食べっぷりに酔ってしまった跡部である。
「ご飯おかわり!」
「………ご飯と肉とスープおかわりの間違いだろうが。おい、お前、顔についてる」
「なにが?」
「ご飯と肉とスープがだ!」
跡部が怒鳴り、神尾は笑う。
「跡部がご飯とか言うの可愛いな!」
「……いいから拭け!」
「拭いて」
「……………てめえ」
「駄目?…じゃあしょうがないから追加注文ついでにあのお姉ちゃんに…」
「ふざけんな…!」
結局ペーパーナプキンで神尾の頬やら口元を拭う跡部だ。
そう、跡部だ。
確かにあれは、紛うかたなき我らがぶちょう。
跡部様がふぁみりーれすとらんにいらっしゃった。
ショックのあまりに時々平仮名。
そんな氷帝テニス部レギュラー陣の目の前で、跡部は黒いジャージの恋人と、いちゃいちゃいちゃいちゃしてらっしゃった。
「激ダサ」
最近この台詞は二人同時で言われる事が多い。
今日もとても綺麗にハモった。
「ですね。宍戸さん」
「……………」
にこにこと微笑む鳳と、がっくり肩を落とす宍戸と。
「ラブい…」
そう確かにその二人はラブいんだが、向日のこの台詞はひとまず隣の隣の隣のテーブルにいる跡部と神尾に向けて放たれている。
「跡部、ママじゃん~」
ジローはそう言ってケラケラ笑って突然眠った。
「………うちんとこの部長、ほんまこういうとこ似合わへんなあ」
苦みばしった声で言った忍足。
ウス、と思わず一人それに返事をしてしまった樺地。
かくして跡部と神尾の初ファミレスデートは、偶然居合わせ来賓となってしまった仲間達に見守られ、由々しくも賑やかに、執り行われる事になったのであった。
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跡部からスプーンを放り投げられた。
そんな風に物を投げられるような、つまり喧嘩を、していた訳ではなかった。
「…………………」
しかし投げて寄こされたスプーンを咄嗟に両手で受け止めた神尾は、当然困惑する。
「跡部」
「返すんじゃねえぞ」
「いや、…てゆーか…」
これ何。
そう言った神尾は。
呆れ返ったような跡部の視線を浴びて、ムッとする。
馬鹿にしまくってる目だ。
「……………………」
跡部に呼ばれてやってきた。
跡部の部屋のドアを開けた。
跡部はスプーンを投げてきた。
だからそれで何なのだ。
神尾は跡部を睨みつける。
部屋のドアのところから、それ以上中に入るものかと意地になって睨み続ける。
冷めた表情の跡部が、根負けして溜息を吐き出すまで神尾はそうしていた。
「………ま、お前が知ってる訳もねえな」
「どういう意味だよ」
「その無駄に容量空きまくっている頭で覚えておくんだな。裕福な家に生まれて、生涯食うものに困らないっていう意味で、世の中には『スプーンを持って生まれた』って言葉があるんだよ」
「…はあ?」
「そいつはラブ・スプーンだ」
机に向かっていた身体を振り返らせ話していた跡部だったが、そこまで言うとさも面倒そうに前を向いてしまった。
部屋の入り口にいる神尾には背中を向けた。
「彫物してあるだろうが。彫刻したラブ・スプーンは、男から好きな女へ、父親から娘へ送るもんなんだよ。判ったか。この無知」
「…………………」
はっきり言って腹のたつ言い方である。
でも神尾の感性はあくまでポジティブに磨かれているので。
無知だの、男から女だの、父親から娘だの、そういうどうでもいい言葉はきれいに省いて。
跡部の口から放たれた、好きな、という言葉だけ拾って零れるように笑った。
跡部には無論見えてないけれど、そこで神尾は微笑んで、手にした小さな銀スプーンを見つめる。
「なー、跡部。俺プリン買って来たんだ」
「………………」
手にしたコンビニの袋から、かさかさ音をさせてプリンを取り出す。
「このスプーン使って一緒に食おーぜ」
「………そういう事に使うもんじゃねえんだよ馬鹿」
「えー、いいじゃん。跡部、あーん、ってやってやるから」
バキッ、と音がした。
何かを書き付けていた跡部の手が、持っていたシャープペンの芯が折れた音だ。
神尾はすっかり気をよくして、な?と言いながら跡部の背中に抱きついた。
右手にスプーン、左手にプリン。
両手は塞がり、そしてすぐに唇も。
跡部のキスに塞がれて。
神尾は笑って、全身への束縛に甘んじた。
そんな風に物を投げられるような、つまり喧嘩を、していた訳ではなかった。
「…………………」
しかし投げて寄こされたスプーンを咄嗟に両手で受け止めた神尾は、当然困惑する。
「跡部」
「返すんじゃねえぞ」
「いや、…てゆーか…」
これ何。
そう言った神尾は。
呆れ返ったような跡部の視線を浴びて、ムッとする。
馬鹿にしまくってる目だ。
「……………………」
跡部に呼ばれてやってきた。
跡部の部屋のドアを開けた。
跡部はスプーンを投げてきた。
だからそれで何なのだ。
神尾は跡部を睨みつける。
部屋のドアのところから、それ以上中に入るものかと意地になって睨み続ける。
冷めた表情の跡部が、根負けして溜息を吐き出すまで神尾はそうしていた。
「………ま、お前が知ってる訳もねえな」
「どういう意味だよ」
「その無駄に容量空きまくっている頭で覚えておくんだな。裕福な家に生まれて、生涯食うものに困らないっていう意味で、世の中には『スプーンを持って生まれた』って言葉があるんだよ」
「…はあ?」
「そいつはラブ・スプーンだ」
机に向かっていた身体を振り返らせ話していた跡部だったが、そこまで言うとさも面倒そうに前を向いてしまった。
部屋の入り口にいる神尾には背中を向けた。
「彫物してあるだろうが。彫刻したラブ・スプーンは、男から好きな女へ、父親から娘へ送るもんなんだよ。判ったか。この無知」
「…………………」
はっきり言って腹のたつ言い方である。
でも神尾の感性はあくまでポジティブに磨かれているので。
無知だの、男から女だの、父親から娘だの、そういうどうでもいい言葉はきれいに省いて。
跡部の口から放たれた、好きな、という言葉だけ拾って零れるように笑った。
跡部には無論見えてないけれど、そこで神尾は微笑んで、手にした小さな銀スプーンを見つめる。
「なー、跡部。俺プリン買って来たんだ」
「………………」
手にしたコンビニの袋から、かさかさ音をさせてプリンを取り出す。
「このスプーン使って一緒に食おーぜ」
「………そういう事に使うもんじゃねえんだよ馬鹿」
「えー、いいじゃん。跡部、あーん、ってやってやるから」
バキッ、と音がした。
何かを書き付けていた跡部の手が、持っていたシャープペンの芯が折れた音だ。
神尾はすっかり気をよくして、な?と言いながら跡部の背中に抱きついた。
右手にスプーン、左手にプリン。
両手は塞がり、そしてすぐに唇も。
跡部のキスに塞がれて。
神尾は笑って、全身への束縛に甘んじた。
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